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共同研究者・大学院修了生
 
講師:三浦史郎
Department of Pathology, Nagasaki Medical Center
長崎医療センター病理診断科 科長
(長崎大学 原研病理 客員准教授)

三浦 史郎 (みうら しろう)
専門分野 ・人体病理学
・実験病理学
・放射線影響科学
学 歴
平成14年 長崎大学医学部卒業
平成16年 長崎大学大学院医歯薬学研究科 入学(原研病理)
平成20年 長崎大学大学院医歯薬学研究科修了 医学博士
職 歴
平成14年 長崎大学医学部附属病院 研修医
平成20年 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 研究機関研究員(原研病理)
平成22年 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 助教(原研試料室)
平成24年 長崎大学原爆後障害医療研究所 講師(原研試料室)
令和元年 長崎医療センター病理診断科 科長
(長崎大学原研病理 客員准教授)
資 格 ・日本病理学会病理専門医
所属学会 ・日本病理学会
・日本臨床細胞学会
・日本放射線影響学会
・日本臨床内分泌病理学会
その他 受賞歴:
・ 第50回日本放射線影響学会優秀発表賞
研究内容
 原爆被爆者の晩発性放射線障害として、原爆被爆者に発生した固形がんと原爆放射線被曝との関連を理解・解明しようと日々、研究を行っています。原爆被爆者の晩発性健康影響の主たるものとして固形がんが知られますが、その疫学的特徴のひとつは、白血病が被爆後約10年で発症のピークに達しその後漸減したのに対し、固形がんは被爆後60年以上を経過した現在においてもその罹患率の増加が継続している点にあります。これまで、原爆被爆者重複がんの原発・転移の免疫組織学的鑑別、長崎原爆被爆者乳癌におけるHER2・C-MYC癌遺伝子増幅率増加の発見など、保存パラフィン切片を用いた分子病理学的解析を行い、新たな知見を見出してきました。  
 特に、長崎原爆被爆者乳癌研究では、被爆者に乳癌リスクの上昇に加え、HER-2C-MYCがん遺伝子の高増幅率が近距離群では高頻度であることを世界で初めて報告しました(Miura S, et al., Cancer 2008)。がん遺伝子の増幅は固形がん発生における重要な分子異常であり、ゲノム不安定性の結果とみなされています。近距離被爆者症例でのがん遺伝子増幅の亢進は、放射線被曝の関与を示唆します。放射線は線量依存性にDNA二重鎖切断を引き起こし、切断されたDNAは修復機構により再結合しますが、修復メカニズムはエラーも起こします。そのため遺伝子の再配列や増幅が生じると考えられています。我々の検討では、HER-2/C-MYC遺伝子共増幅率は近距離群42.1%、遠距離群6.3%、非被爆者群4.8%でした。近距離群乳癌でのがん遺伝子増幅頻度の亢進は、放射線被曝の関与を示唆します。近距離被爆者ではゲノム不安定性が高度で、結果としてがん遺伝子増幅頻度が亢進しているものと推察されます。
 現在、被爆者固形がん発生機構のひとつとしてゲノム不安定性の関与をさらに解明するために、長崎原爆被爆者乳癌症例の正常皮膚におけるDNA損傷応答の解析を進行中です。癌組織検体はもとより、易腫瘍発症性のリスク因子としてのゲノム不安定性を正常部組織上で評価し、将来的には固形がん発症の予知や早期診断・治療法への応用を考えています。また、2008年4月より長崎原爆被爆者新鮮凍結検体のバンキングを行っており、現在までに250例近くの被爆者腫瘍、及び正常部の組織検体が収集・保存され、今後の研究に対応可能な症例数が集まりつつあります。今後、新鮮試料を用いた原爆放射線発がん研究も積極的に行う予定です。

赤澤祐子
Professor
教授(組織細胞生物学)
赤澤 祐子 (あかざわ ゆうこ)
略 歴
2000年 長崎大学医学部卒業
2000年 長崎大学病院第二内科入局
2003年 大村市立病院勤務
2004年 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科(感染分子病態学)入学
2006年 Mayo clinic (USA) 留学
2010年 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科(感染分子病態学)卒業
2010年4月 長崎大学病院 消化器内科 助教
2013年10月 長崎大学 原研病理 助教
2015年4月 長崎大学病院 医療情報部 助教
2016年8月 長崎大学医歯薬学総合研究科 病理学/病理診断科 講師
2019年4月 長崎大学 原研試料室 准教授
2022年10月 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 組織細胞生物学 教授
専門分野 消化器内科
資 格 ・日本内科学会認定医・専門医
・日本消化器病学会専門医・指導医
・日本肝臓学会肝臓専門医
・日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
・診療情報管理士
所属学会 ・日本内科学会
・日本消化器病学会(評議員・九州支部評議員)
・日本消化器内視鏡学会(九州支部評議員) ・日本肝臓学会
・日本診療情報管理学会
・日本ヘリコバクター学会(代議員)
・アメリカ肝臓学会
・日本病理学会
・日本組織細胞化学会
・日本解剖学会(代議員)
・日本細胞生物学会
研究内容
 私は “消化器疾患とアポトーシス”をテーマとして基礎研究を行っています。新薬の登場でC型肝炎とB型肝炎の治療成功率が劇的に改善されることが予想される現在、次なる課題は肥満に関連した肝疾患、消化管疾患の治療にあると考えています。特に非アルコール性脂肪肝炎(NASH)には直接有効な治療法がありません。ファーストフードなどの普及、食生活の変化により肥満の頻度は世界でも日本でも高まっており、NASHを母地とした肝癌も増加してきています。私は、急速に問題となっているNASHの発症機序の解明と有効な治療法の開発に強い興味を持ってきました。NASHの形成過程では肝細胞の遊離脂肪酸によるアポトーシスが深く関係しています。どのようにして遊離脂肪酸による肝細胞アポトーシスが起きるのか?どのようにしたらそれを防げるか?この2つのテーマが私の研究の根本にあります。今後は、放射線障害がNASHを含む生活習慣病に与える影響を含め、さらに研究を発展させていきたいと思います。

COE博士研究員:松山睦美
Assistant Professor
助教(共同研究推進部)
 松山 睦美 (まつやま むつみ)
出 身 長崎市
専門分野 ・実験病理学
・放射線影響科学
・分子病理学
略 歴
・長崎大学医学部研究生
・長崎大学医学部附属原爆後障害医療研究施設
 研究機関研究員
・長崎大学医歯薬総合研究科附属原爆後障害医療研究施設
 COE研究員
2012年〜 長崎大学原爆後障害医療研究所 助教
資 格 博士(医学) 長崎大学
所属学会 ・日本放射線影響学会
・日本病理学会
・日本臨床内分泌病理学会
研究内容
 これまでに放射線照射後の腸管の急性放射線障害、特に放射線誘発細胞死を防護する薬剤の探索を行ってきました。アミノ酸混合物のシスチン・テアニン前投与が、X線照射後のラットの生存率を改善し、小腸クリプト細胞と骨髄細胞のアポトーシスの阻害と増殖活性の増加を示すことを報告しました。
 一方甲状腺では、放射線高感受性臓器である小腸と異なり、放射線照射後の成熟濾胞上皮細胞に細胞死は出現しません。小児期の放射線被曝は甲状腺癌の危険因子であることが知られていますが、その機序は明らかになっていません。放射線照射後、若週齢及び高週齢ラットの甲状腺濾胞上皮細胞における放射線感受性や発がんへの影響を調べたところ、どちらも照射後急性期でDNA損傷応答分子の増加は見られますが、アポトーシスは起きないこと、増殖活性の高い若週齢ラットで急激な増殖細胞数の低下とオートファジー関連分子であるLC3-IIとp62の発現増加が認められました。照射後慢性期では、若週齢被曝ラットで悪性腫瘍発生率は高く、甲状腺腫瘍は多発性に発生し、悪性腫瘍部でのオートファジーの不全が起きている可能性が示唆されました。
 現在オートファジーが若週齢の放射線誘発甲状腺発がんにどのような影響を与えるのかを調べる研究を行っています。

大坪竜太
Senior Assistant Professor
講師(腫瘍外科(乳腺・内分泌外科))
大坪 竜太
(おおつぼ りょうた)
出身大学 2000年 自治医科大学卒業
略 歴
2000年 国立長崎中央病院(現 国立病院機構長崎医療センター)
2002年 上五島病院外科
2003年 自治医科大附属さいたま医療センター外科
2004年 上対馬病院外科
2006年 対馬いづはら病院外科
2009年 国立病院機構長崎医療センター
2010年 長崎大学医学部病院第一外科(入局)
2011年 日本赤十字長崎原爆病院外科
2012年 長崎大学医学部病院第一外科
長崎大学原爆後障害医療研究所
腫瘍・診断病理学研究分野(原研病理)
2014年  医学博士号取得(早期修了)
2014年 長崎大学第一外科助教
2016年 Department of surgery, Leiden University Medical Center, The Netherlands
2017年 長崎大学腫瘍外科 助教
2020年 長崎大学腫瘍外科 講師 (2021年1月〜医局長)
専門分野 乳腺外科・内分泌外科
資 格 ・博士(医学)
・日本外科学会(認定医・専門医・指導医)
・日本乳癌学会(乳腺認定医・専門医・指導医)
・日本内分泌外科学会 専門医
・日本がん治療認定医機構(がん治療認定医)
・検診マンモグラフィー・超音波読影(認定医)
・厚労省認定臨床研修指導医
・日本乳房オンコプラスティックサージェリー学会 責任医師
・JATEC・JPTECインストラクター
・長崎緩和ケア研修会修了
・日本乳癌学会 長崎大学病院 乳腺専門研修カリキュラム 統括責任者
所属学会 ・日本外科学会
・日本臨床外科学会
・日本乳癌学会
・日本乳癌検診学会
・日本甲状腺外科学会
・日本人類遺伝学会
・日本病理学会
・日本乳癌学会(評議員)
・総務委員会 会員サービス検討小委員会 委員
・地方活性化委員会 委員 [九州]
・診療ガイドライン評価委員会 委員
研究内容
(1) 乳癌センチネルリンパ節転移における新規診断法(semi-dry dot-blot:SDB法)のキット化と市販化

乳癌センチネルリンパ節(SLN)生検は確立された手技であるが、病理医不足や術中診断と最終診断の乖離などが問題である。本研究では、dot-blot法を応用したSDB法を用いた新規乳癌SLN転移診断法の臨床評価を行った。術中に摘出したSLNを入割し洗浄、洗浄液中に遊離した細胞を遠心し溶解させ、漏出した蛋白をanti-pancytokeratin antibody(AE1/AE3)を用いて膜上で免疫染色を行い、転移を判定する。100症例、174個の乳癌SLNにおける本法と最終病理診断との比較では、感度93.3%、特異度 96.9%、一致率 96.6%であった。SDB法は迅速、精確、低コストであり、組織の損失がなく病理学的評価が同時に可能であった。その後キット化に成功し、2020年度 AMED橋渡しシーズBの支援のもと臨床性能試験を実施し、保険収載と市販化を目指している。

(2) 甲状腺濾胞癌におけるゲノム不安定を用いた術前診断

甲状腺濾胞癌は術後の病理組織診断で被膜浸潤,脈管侵襲,転移のいずれかをもって診断しており、術前の針細胞診では診断困難である、ゲノム不安定性に関与する核内蛋白の一つである53BP-1(p53 binding protein-1)の蛍光免疫染色を用いて濾胞癌と良性の濾胞腺腫の評価を行い、術前診断への応用を目指している。


 
Nagasaki Harbor Medical Center
長崎みなとメディカルセンター(消化器内科)
矢嶌 弘之 (やじま ひろゆき)
出 身 長崎市
専門分野 消化器内科
略 歴 2003年3月 長崎大学医学部卒業
2003年4月 長崎大学病院第二内科入局
2004年6月 長崎医療センター勤務
2005年6月 聖フランシスコ病院勤務
2007年4月 長崎大学大学院医歯薬総合研究科入学(先進感染制御学)
2010年4月 長崎医療センター勤務
2013年6月 光晴会病院勤務
2014年8月 長崎大学大学院医歯薬総合研究科卒業(先進感染制御学)
2015年4月 長崎大学原研病理 助教
2016年4月 長崎みなとメディカルセンター 消化器内科 医長
資 格 ・日本内科学会認定医
・日本消化器病学会専門医、指導医
・日本消化器内視鏡学会専門医、指導医、九州支部評議員
・日本消化管学会専門医
所属学会 ・日本内科学会
・日本消化器病学会
・日本消化器内視鏡学会
・日本消化管学会

和田英雄
Ureshino Medical Center
嬉野医療センター(外科)
和田 英雄 (わだ ひでお)
出 身 福岡
専門分野 消化器外科
学 歴
平成17年 長崎大学医学部卒
職 歴
平成17年 長崎大学病院(初期研修)
平成18年 佐世保中央病院(初期研修、後期研修)
平成20年 長崎大学病院(長崎大学腫瘍外科入局)
平成21年 北九州市立八幡病院外科
平成22年 嬉野医療センター外科
平成23年 周南記念病院外科
平成24年 長崎原爆病院外科
平成25年 長崎大学病院腫瘍外科 11月より原研病理
2016年4月~2019年3月 長崎大学腫瘍外科 助教
2019年4月~ 嬉野医療センター 消化器外科 医員
2021年4月~ 嬉野医療センター 消化器外科 医長
資 格 ・消化器外科専門医
・日本消化器癌治療認定医
・日本がん治療認定医
・日本内視鏡外科技術認定医(一般外科)
・日本腹部救急医学会認定医
所属学会 ・日本外科学会
・日本消化器外科学会
・日本臨床外科学会
・日本腹部救急医学会
・日本内視鏡外科学会
・日本消化器病学会
研究内容
 多臓器神経内分泌腫瘍の分子病理学的解析

Professor
教授(医療教育開発センター) 
松島 加代子
(まつしま かよこ)
略 歴
2003年 5月 長崎大学医学部附属病院第二内科入局、臨床研修医
2004年 9月 長崎医療センター 臨床研修医
2005年 6月 長崎大学医学部・歯学部附属病院 第二内科 医員
2005 年11月 長崎医療センター 消化器内科 医師
2006年1月 長崎大学医学部・歯学部附属病院 第二内科 医員
2010年4月 三佼会宮崎病院 医師
2010年6月 諫早療育センター 医師
2011年4月 長崎大学病院 医療教育開発センター 助教
2020年7月 長崎大学病院 医療教育開発センター 講師
2021年3月 長崎大学病院 医療教育開発センター・医師育成キャリア支援室 教授
研究歴
平成18年4月~平成22年6月 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科
平成24年9月~平成24年10月 米国 Mayo clinic短期留学
学会活動
(資格・役職有のみ記載)
・日本内科学会総合内科専門医・指導医
・日本消化器病学会専門医・九州支部評議員
・日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・九州支部評議員
・日本肝臓学会専門医
・日本消化管学会胃腸科専門医
・日本ヘリコバクター学会認定医・代議員
・日本レーザー医学会関西支部評議員
・日本東洋医学会専門医・長崎県部会評議員
・日本医学教育学会理事・代議員

橋口慶一
Senior Assistant Professor
講師(光学医療診療部)
橋口 慶一
(はしぐち けいいち)
出 身 長崎市
専門分野 消化器内科、内視鏡診療
略 歴
平成17年3月 長崎大学医学部医学科卒
平成17年4月 長崎大学医学部附属病院 初期研修医
平成18年4月 佐世保市立総合病院 初期研修医
平成19年4月 佐世保市立総合病院 消化器内科 修練医
平成19年8月 長崎大学医学部附属病院 第二内科 修練医
平成20年4月 北松中央病院 消化器内科
平成22年4月 聖フランシスコ病院 内科
平成23年4月 長崎大学病院 消化器内科 医員
平成23年4月 長崎大学大学院医歯薬総合研究科入学(消化器病態制御学)
平成26年4月 諫早総合病院 消化器内科
平成27年3月 長崎大学大学院医歯薬総合研究科卒業(消化器病態制御学)
平成28年4月 長崎大学病院 消化器内科/長崎大学 原研病理 助教
平成30年4月 長崎大学病院 消化器内科/光学医療診療部 助教
令和4年4月 長崎大学病院 消化器内科 医局長/光学医療診療部 助教
資 格 ・日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
・日本消化器病学会専門医・九州支部評議員
・日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・九州支部評議員・学術評議員
・日本消化管学会胃腸科専門医
・日本消化器病学会専門医
・日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
・日本消化管学会胃腸科専門医・指導医
所属学会 ・日本内科学会
・日本消化器病学会
・日本消化器内視鏡学会
・日本消化管学会
・日本ヘリコバクター学会
・日本胃癌学会
・日本消化器病学会(九州支部評議員)
・日本消化器内視鏡学会(九州支部評議員・学術評議員)
研究内容
▼表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍の内視鏡診断・治療

 近年、十二指腸の非乳頭部領域に腺腫や早期癌を指摘される機会が増えています。胃や大腸と比べると内視鏡診断や治療指針が確立されておらず、課題が残る領域です。
 内視鏡診断において、画像強調観察法の一つであるLinked color imaging(富士フィルム社)を用いて、病変拾い上げ診断能が向上するか研究を行っています。このモードでの観察が有用であることが確認されれば、健診内視鏡などでも十二指腸腫瘍を発見、診断できることが期待されます。
 内視鏡治療法は、病変サイズによって方針が異なってきます。20mm以下でスネアとよばれるワイヤー製の輪っかで病変をしっかり把持できると判断されれば、病変下部に局注したのちスネアで把持して切除する内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection: EMR)が選択されることが多いです。一方20mm以上あるいは15mm程度でもスネアでの把持が困難と予想されれば、内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection: ESD)が選択されることが多くなります。いずれの治療も胃や大腸で一般的な治療法ですが、十二指腸の解剖学的特性(管腔が狭い、屈曲が強い、壁が薄い、胆汁膵液の曝露がある)から治療難易度が高いとされています。
 近年、EMRの派生法として浸水下EMRが考案され、広まっています。これは十二指腸の内腔を空気ではなく水で満たし、水中で浮遊した病変を局注することなくスネアで把持し切除する方法です。しかしながら、浸水下EMRが従来のEMRより明らかに優れているというデータは不足しています。われわれはこれら従来型EMRと浸水下EMRを組み合わせたさらなる派生法である『マーキング・局注併用浸水下EMR』を考案、取り組んでおり、この新規治療法と従来型EMRの前向きランダム比較試験を開始しています。新規治療法の有用性が証明されれば、十二指腸腫瘍に対する内視鏡治療法の確立へ一歩近づくことが期待されます。


▼細胞シートを用いた十二指腸ESD遅発性穿孔予防法の確立(消化器再生医療学講座との共同研究)

 EMRで対応困難な十二指腸腫瘍に対するESDでは、術中・遅発性穿孔率の高さが問題となっています。特に遅発性穿孔は後腹膜膿瘍や腹膜炎に至り、複数回の手術や処置を要することがあります。近年では、腹腔鏡と内視鏡合同での手術が一般的になりつつあり、遅発性穿孔の予防策として腹腔鏡での粘膜欠損部縫縮などが提唱されていますが、確立された方法はありません。
 われわれは消化器再生医療学講座 金高教授らと共同で粘膜欠損部に自己筋芽細胞シートを移植して、遅発性穿孔を予防する研究を行っています。すでに大動物実験など非臨床proof of conceptは確認できており、2021年度より「自己筋芽細胞シートを用いた十二指腸ESDの遅発性穿孔予防」の医師主導治験を開始しています。この再生医療を応用した技術の有用性が証明されれば、十二指腸腫瘍に対する内視鏡治療の安全性が高まることが期待されます。


七條和子
Visiting Researcher
客員研究員 七條 和子 (しちじょう かずこ)
専門分野 ・実験病理学
・人体病理学
・分子病理学
・放射線影響科学
・薬理学
学 歴 長崎大学薬学部薬学科卒業
医学博士〔長崎大学〕
職 歴
・日本学術振興会海外の中核的拠点への派遣研究者
  アメリカデュ—ク大学医学部外科(Prof. Theodore N, Papas)リサーチアソシエイト
・長崎大学大学院医歯薬学総合研究科助教(原研病理)
資 格 ・博士(医学)
・ 薬剤師
所属学会 ・日本潰瘍学会(評議員)
・日本薬理学会(評議員)
・日本自律神経学会(評議員)
・日本放射線影響学会
・日本病理学会
その他 ・長崎女子短期大学 非常勤講師
・活水女子大学非常勤講師
・県立長崎シーボルト大学非常勤講師
・長崎原爆資料館運営協議会委員
研究内容
1) 低線量被ばくの健康リスク評価・管理と放射線医学教育への展開研究
原爆被爆者病理標本における残留放射能と内部被曝の分子病態解明についてオートラジオグラフィー法で人体内残留放射能を測定し、内部被曝の影響を研究している。
2) 高線量放射線被爆に対する再生医療の応用開発の研究
骨髄移植後、ラットに放射線誘発甲状腺がんおよび放射線誘発大腸がんを作成し、病態モデルを検討している。サイトカインによる治癒促進効果、および変異腺管における発がんとゲノム不安定性についても検討している。
3) 広島大学 平成27年度共同利用・共同研究
「原爆被爆者に関するプルトニウムと内部被曝の研究―その5」重点5-7
東北大学加齢医学研究所共同研究員
「長崎原爆被爆におけるプルトニウム内部被曝の検討」63
4) 共同研究(カザフスタン医科大学、広島大学、島根大学)科研A H26-H29
「カザフ核実験場周辺住民の放射性降下物被曝の実態解明ー線量評価及び健康診断解析ー」 共同研究(広島大学):放射線災害・医科学研究拠点 トライアングルプロジェクトH29- テーマ:低線量被ばく影響とリスク研究「Mn-56低線量内部被曝の生物学的影響とその障害メカニズムの解析」
放射線影響評価では、外部被曝影響に加え内部被曝影響の評価が重要と考えられているが十分解明されていない。原発事故においても、放射性微粒子等による内部被曝の影響評価は極めて重要な課題である。我々は、広島・長崎原爆の中性子線により土埃中で多量に生成したと考えられる放射性マンガン微粒子による被爆影響に着目し、中性子線照射により生成した56MnO2(Mn-56)微粒子をラットに曝露する予備的な内部被曝実験を行った。その結果、低線量被曝にもかかわらず、肺において病理組織学的な障害が生じることを見いだした。本研究では予備研究結果をさらに展開し、Mn-56低線量内部被曝の生物影響とその障害の分子メカニズムを解明することを目的とする。
  原爆被爆者標本内残留放射能測定と放射線の組織障害について共同研究を行っている。

蔵重智美
Visiting Researcher
客員研究員(原研分子) 
蔵重 智美
(くらしげ ともみ)
出 身 長崎市
専門分野 ・実験病理学
・放射線影響科学
・分子病理学
資 格 博士(医学) 長崎大学
所属学会 ・日本臨床内分泌病理学会
・日本癌学会
研究内容
1) 甲状腺オンコサイトーマと非オンコサイトーマでのエネルギー代謝の比較検討と治療への応用

 甲状腺オンコサイトーマは、ミトコンドリアDNA (mDNA)に異常があるために電子伝達系複合体Iが機能しない異常ミトコンドリアが細胞質に集積している稀な甲状腺腫瘍です。この種の腫瘍細胞は、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化でATPを産生できないため、解糖系とTCA回路での基質レベルリン酸化にATP産生を依存していると考えられます。そのため甲状腺オンコサイトーマは、通常の甲状腺癌に比較して,解糖系阻害やTCA回路での基質レベルリン酸化に重要であるグルタミン代謝阻害による細胞障害に感受性が高いことが予測されます。そこで甲状腺オンコサイトーマと通常の甲状腺癌細胞株で種々の代謝阻害剤への感受性を比較し、それぞれでの優位なATP産生経路を同定する目的で研究を行っています。またミトコンドリアDNA欠損細胞(ρ0)株を作出してミトコンドリア機能の関与も検討を行っています。さらにそれら代謝阻害剤と従来の甲状腺がん治療法(放射線療法やキナーゼ阻害剤等)との併用増強効果についても検討する予定です。

2) 甲状腺特異的ATG5KOマウスを用いた放射線誘発性甲状腺発がん機構の解明

 オートファジーが甲状腺においてどのような役割を果たしているのか、また放射線外部被ばくを受けた際にオートファジーが発がんに対し抑制、促進どちらに働くのかを明らかにすることを目的として研究を行っています。具体的には正常甲状腺に増殖刺激・抑制を与えた場合のオートファジーの変化を観察し、また薬剤誘導性のオートファジーの促進・抑制に対する甲状腺機能についての検討を行っています。さらにAtg5TPO-KOマウスを長期間観察することでオートファジーの不全が甲状腺の機能や形態学的変化に与える影響の有無、さらに放射線照射による発がんの頻度やROS産生の関与の有無を検討しています。


Zhanna Mussazhanova
Postdoctoral Researcher
カロリンスカ研究所博士研究員
 Luong Thi My Hanh
出 身 Vietnam
専門分野 ・人体病理学
資 格 博士(医学)
Hanoi Medical University卒業
所属学会 ・日本病理学会





































 
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