研究内容

1.各種手法による疾患の変異同定
 各種の遺伝性疾患についてその原因遺伝子,原因変異を同定することを目的としている。病気の原因遺伝子を同定が,診断・治療の第一歩と信じて研究を進めている。本研究が当教室の全ての研究の基本である。全ては,本研究から得られる知見,アイディア,方法を駆使して全ての研究が派生している。現在は,次世代型シーケンサーによる患者DNA解析に力を注いでいる。
2.疾患原因の遺伝子産物機能解析と細胞生物学的解析
 患者解析によって原因遺伝子を特定しただけでは,患者さんへのメリットはほとんど無い。そこで,遺伝子の変異によって細胞の何が悪いのか?細胞の集合として組織の何が悪いのか?身体全体として何が悪いのかを丹念に検証していくことが重要である。何故ならば,そこに患者さんの治療法の糸口が見つけられるからである。遺伝子解析から治療介入,治療薬の開発への方向性の発見に向けて研究を推進している。
3.一遺伝子病・多因子遺伝病における疾患多様性の機序解明
 疾患は,XXXX症候群と名称が付いていても,患者さんの症状は多彩で幅広いスペクトラムを有している。当教室では,そのような多様性が遺伝子変異や多型だけではなく,エピゲノム変化が疾患の多様性を作り出しているのではないかと考え,ゲノム解析に加えてエピゲノム解析を実施している。
4.放射線によるゲノム障害に対する定量的評価法の開発
 分子遺伝学の立場から,放射線被ばくの影響は最終的にはゲノムの変化として残されていると考えている。放射線被ばくの影響をゲノム変化として,定量的に評価できないかと考えその評価法の開発を進めている。
5.放射線による遺伝子異常誘発およびゲノム不安定性のメカニズムの解明
 放射線被ばくの影響がゲノムに残される過程がどのようなものであるかを明らかにするための基礎研究を進めている。放射線の影響は,ゲノムへの直接影響,ゲノム不安定化,エピジェネティクス変化,蛋白質の変化,酸化ストレス等による細胞への影響など,多岐にわたると考えられる。当人類遺伝学教室では,観測対象として“ゲノム”に注目して何がゲノム変化を誘発するのか,そのメカニズムを明らかにすべく研究を進めている。
現在の主な研究対象疾患リスト

 ・ 歌舞伎症候群(Kabuki syndrome)
 ・ Sotos症候群(Sotos syndrome)
 ・ 家族性脳動静脈奇形(Arterio-Venous Malformation)
 ・ Marden-Walker症候群〜類似疾患(Marden-Walker syndrome)
 ・ DeMorsier 症候群(DeMorsier syndrome)
 ・ Branchio-Oculo-Facial 症候群(Branchio-Oculo-Facial syndrome)
 ・ エーラスダンロス症候群III型〜類似疾患(Ehlers-Danlos syndrome)
 ・ Rubinstein-Taybi 症候群〜類似疾患(Rubinstein-Taybi syndrome)
 ・ SHORT症候群(SHORT syndrome)

 その他,稀少疾患の遺伝子解析研究を実施しています。