放射線医療科学国際コンソーシアムについて

  平成14年度文部科学省21世紀COEプログラム(113件)のひとつとして採択されました本プログラムの目的は、長崎原爆の後障害医療研究およびチェルノブイリ原発事故・セミパラチンスク核実験場周辺の放射線被ばく者における国際医療と疫学の2領域、および放射線生命科学の基礎研究領域を統合し、学際的・複合的に新領域を切り開くために、国際的最高レベルの研究・教育コンソーシアムを構築し、その拠点を長崎大学に形成することです。20世紀の核エネルギー利用で生じた人類的負の遺産としての、数百万人を超える大規模放射能汚染による放射線被ばくの人体影響、特に低線量による影響を、細胞・分子レベルで解明し、最も重要な癌発生の予防・診断・治療を飛躍的に発展させることを目指しています。同時に、本コンソーシアムに参加する海外の主要な大学・研究所と長崎大学の間で、臨床・基礎の両領域において若手研究者および大学院学生の相互派遣事業を積極的に推進して、国際的研究者の育成と供給を図ります。これらの事業により、原爆被害を被った世界で唯一の大学として、長崎大学が掲げる世界平和の構築のために必須の科学的真理を探究するものです。

本コンソーシアムの最高意思決定機関は、以下のメンバー10名で構成される、国際コンソーシアムメンバー会議です。

朝長 万左男* 分子治療研究分野教授
山下 俊一 分子診断研究分野教授
関根 一郎 病態分子解析研究分野教授
新川 詔夫 変異遺伝子解析研究分野教授
奥村 寛 放射線応答解析分野教授
近藤 宇史 分子情報制御研究分野教授
柴田 義貞 放射線疫学研究分野教授
本田 純久 放射線疫学研究分野助手
渡邉 正己 放射線生物学分野教授
吉川 勲 環境科学研究科教授

*拠点リーダー。渡邉正己(大学院医歯薬学総合研究科)と吉川 勲以外は、全員が大学院医歯薬学総合研究科附属原爆後障害医療研究施設の所属。

本コンソーシアムの事業推進は、メンバーの他に個々の事業推進に当たる教官等が構成する国際コンソーシアム運営会議の責任で行われます。

本プログラムの根幹をなす国際コンソーシアムの円滑な構築を図るために、これまでの研究交流の経緯から、主として放射線被ばく者の国際医療フィールドで培ってきた旧ソビエト連邦諸国の大学・研究所との連携を図る放射線被ばく医療・疫学コンソーシアムと、放射線生物学の基礎的研究領域で世界のトップレベルにある欧米諸国の大学・研究所との連携を図る放射線生命科学コンソーシアムの2部門制を取り、その運営には国際コンソーシアム運営委員会(委員長:朝長万左男;放射線被ばく医療・疫学コンソーシアム責任者:山下俊一;放射線生命科学コンソーシアム責任者:渡邊正己)が当たっています。いずれも各大学・研究所の責任者と具体的な折衝を行い、コンソーシアムへの参加の意思確認と、大学間学術交流協定の締結を行っています。両コンソーシアム部門間の学術交流を長崎大学で毎年開催するシンポジウム・ワークショップの場で実現します。また、旧ソ連邦からの若手研究者・大学院学生にも長崎大学を介して、欧米の大学・研究所で研究する機会を与えます。

これまでに本コンソーシアムへの参加の意思が確認され、学術交流協定が結ばれたのは以下の大学・研究所です。

放射線被ばく医療・疫学コンソーシアム
  • ビュルツブルク大学医学部、ドイツ
  • セミパラチンスク医科大学、カザフスタン共和国
  • ベラルーシ医科大学、ベラルーシ共和国
  • ゴメリ医科大学、ベラルーシ共和国
  • ロシア医学アカデミー医学放射線研究所、ロシア連邦
  • 放射線医学環境研究所、カザフスタン共和国
  • ウクライナ医学アカデミー内分泌代謝研究所、ウクライナ
  • ウクライナ医学アカデミー放射線医学研究所、ウクライナ
  • アルタイ医科大学、ロシア連邦
放射線生命科学コンソーシアム
  • ライデン大学、オランダ
  • ユニバーシティカレッジロンドン、イギリス
  • ミシガン州立大学人間医学部、アメリカ
  • グレイがん研究所、イギリス
  • メリーランド大学バルチモア校、アメリカ