長崎大学医学部附属原爆後障害医療研究施設『資料収集保存部』が設立されて、13年を迎えました。『資料収集保存部』は平成9年4月、旧原爆後障害医療研究施設と原爆被災学術資料センターの整備・統合により生まれ、基本的には原爆被災学術資料センターの組織と業務を継承しています。『資料収集保存部』は「資料調査室(略称:原研情報室)」と「生体材料保存室(略称:原研試料室)」より構成されています。「資料調査室」は被爆者に関する基本情報ファイルの作成、健康ならびに医療情報ファイルの作成、医学文献の収集整理、その他の記録文書、写真、映画、録音等の重要資料の収集整理をその主要任務とし、「生体材料保存室」は被爆者剖検例の収集、整理、臓器の保存及び病理学的研究、手術症例の収集と整理、急性原爆症症例の収集と整理、米国返還被爆資料の整理と保存を主要任務としています。これらの膨大な資料等は、現在もなお最新のコンピュータ装置に収納・蓄積されつつあります。また、原爆の医学的被害を分かりよく解説した「資料展示室」もあります。
原爆投下から64年が経過し、0歳被爆者も63歳になるなど、原爆の体験者が年々少なくなっていくなかで、ともすれば「原爆」が歴史の一部として埋没、その記憶も風化していくことが危惧されています。しかし、通常兵器に比べ桁違いの破壊力をもつ原爆、また遺伝子損傷・発癌など取り返しのつかない影響を生体に引き起こす原爆、二度と使用されてはなりませんし、原爆被爆者の健康影響の解明、健康管理は今後も引き続き行うことは我々の使命です。長崎の原爆は人類にとって最後の核兵器使用でなければなりません。私たち資料収集保存部の職員はこの悲しむべき原爆の医学的資料を収集保存し、研究し、原爆と云う人類の負の遺産を科学的な資料として後世に残すべく日夜努力しています。
平成 25年 4月
長崎大学 原爆後障害医療研究所
資料収集保存・解析部
部長 高村 昇
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